測量2026.07.08監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

測量士補との掛け算で伸びるドローン測量キャリア

この記事の要点

「うちは測量士補を持っていないと厳しいですか」。建設・土木業界の方からのご相談で、よく聞かれる質問です。結論を先に言うと、測量士補がなくてもドローン測量の仕事に就くこと自体は可能です。ただし、資格を持っているかどうかで任される仕事の幅と年収の伸び方が大きく変わってくる、というのが実態に近い言い方だと思います。

皆さま、建設現場のICT化という言葉を聞いたことはありますか。国土交通省が推進するi-Constructionの流れの中で、ドローンによる測量・出来形管理は、もはや一部の先進企業だけの取り組みではなくなっています。この波に乗れるかどうかで、建設・土木業界でのキャリアの伸び方が変わってきています。

0. なぜ測量にドローンが向いているのか

従来の測量は、測量士が現地で機材を使って一点ずつ計測する方法が主流でした。ドローンによる写真測量・レーザー測量(LiDAR)は、広い範囲を短時間で計測でき、得られた画像から点群データという3次元の情報を生成できます。ここが今回の隠れた主役です。ドローンは「速く・広く」測れる道具であり、精度を担保する測量の専門知識と組み合わさって初めて、実務で使える成果物になります。操縦技術だけでは測量の仕事は完結しません。国土交通省が推進するi-Constructionの取り組みの中で、ICT建機・ドローン測量の活用は年々広がっており、対応できる人材の確保が建設業界全体の課題になっています。

1. 測量士補という資格の位置づけ

測量士補は国家資格で、測量法に基づき測量士の指示のもとで測量業務を行うための資格です。指定された大学・専門学校で必要な科目を修めれば試験免除で取得できるルートもありますが、社会人からの転身であれば国家試験を受験するのが一般的なルートになります。測量士補を持っていること自体が即戦力の証明になるわけではありませんが、「測量の基礎を理解している」という信頼の土台になります。

1-1. 測量士補とドローン、どちらを先に取るか

建設・土木業界にすでに在籍している方は、測量士補を先に取得するほうが実務との接続がスムーズです。一方、未経験から測量分野を目指す方は、まずドローンの操縦資格を取得し、実務経験を積みながら測量士補を目指すという順番でも構いません。目指すゴールから逆算して、どちらを先に取るべきかを判断してください。

1-2. 測量士との違い

測量士は測量業務を独立して実施・管理できる上位資格です。将来的に測量業務の責任者を目指すのであれば測量士、まずは実務者として測量ドローンのスキルを磨きたいのであれば測量士補、という位置づけで考えるとキャリアの道筋が描きやすくなります。

2. 点群処理という「もう一つの専門性」

ドローンで撮影したデータをそのまま使えるわけではありません。写真測量ソフトやLiDARデータの処理ソフトを使い、点群データを生成・解析する工程が必要です。この点群処理のスキルは、測量士補の資格以上に実務での評価に直結すると言っても過言ではありません。実際、僕が聞く現場の声でも「資格より、ソフトを使いこなせるかどうかで仕事の任され方が変わる」という意見が多く聞かれます。

2-1. 独学かOJTか

点群処理ソフトの基本操作は独学でも習得できますが、実務レベルの精度を求められる現場では、経験者のもとでのOJTがやはり近道です。未経験からの入社であれば、教育体制の整った建設コンサルタントや測量会社を選ぶことをおすすめします。

2-2. よくある失敗

操縦技術ばかりに時間を投資し、点群処理の学習を後回しにしてしまう方をよく見かけます。測量分野で評価されたいなら、操縦と解析の両方に早い段階から手を出しておくべきです。もう一つよくある失敗は、ソフトの操作は覚えたものの、出てきたデータの精度を検証する視点が抜け落ちているケースです。測量は最終的に「正確さ」が命の仕事であり、データを出すことと、そのデータが正しいと保証できることは別のスキルだと理解しておく必要があります。

3. 建設・土木からの越境ルート

すでに建設・土木業界で働いている方にとって、ドローン測量は最も現実的な越境先の一つです。現場の文脈(施工の流れ、図面の読み方)をすでに理解しているため、測量ドローンの技術だけを追加で習得すれば、比較的スムーズに専門職として立ち上がれます。誤解がないように申し上げると、これは建設・土木の経験がなければ入れないという意味ではありません。ただ、現場経験がある方のほうが、立ち上がりのスピードが明らかに速いというのが実感です。

5. 年収と雇用形態のリアル

測量分野の年収は、僕が面談で聞く範囲の目安値であり統計値ではありませんが、未経験・測量士補なしの入口では350〜450万円程度、測量士補を取得し点群処理の実務経験を積むと450〜600万円程度まで伸びる印象です。建設コンサルタントの正社員として採用されるケースが多く、点検・農業など他の領域に比べて雇用形態は安定している傾向があります。資格と実務スキルの両方が揃った人材は、地方の建設コンサルタントでも都市部並みの待遇を提示されることがあります。

誤解がないように申し上げると、年収の伸びは「測量士補を取ったから自動的に上がる」というものではありません。点群処理の実務経験、担当したプロジェクトの規模、会社の評価制度によって幅が出ます。資格はあくまで土台であり、そこに実務の積み上げが必要だと考えてください。

6. 天候・季節要因との付き合い方

測量業務も点検と同様、屋外での飛行が前提になるため天候の影響を受けます。加えて、公共工事の測量案件は年度末(1〜3月)に業務が集中する傾向があり、繁忙期と閑散期の差が大きいのも建設・土木業界らしい特徴です。僕の周囲の実感で言うと、この繁忙期を乗り切れるかどうかが、測量分野で長く働けるかの一つの分かれ目になっているようです。入社前に、繁忙期の残業時間や体制について確認しておくことをおすすめします。

4. 実務パート:測量分野を目指す人がまずやること

①測量士補の受験要項を国土地理院のウェブサイトで確認する(所要20分)。年に1回の試験なので、受験タイミングを早めに把握しておくことが重要です。

②建設コンサルタント・測量会社のICT施工関連の求人を5件比較する(所要30分)。教育体制・使用ソフトの記載を重点的にチェックしましょう。

③点群処理ソフトの無料体験版やチュートリアル動画で、基本操作に触れてみる(所要1時間)。実際に触れてみることで、自分がこの分野に向いているかを肌感覚で確認できます。

④建設・土木業界に在籍中の方は、社内でICT施工案件に手を挙げる(継続的に)。異動や担当替えを通じて、転職せずに測量ドローンの実務経験を積める場合もあります。まずは社内での可能性を探ってみてください。

7. 中長期のキャリアの伸び方

測量分野で腰を据えて働く場合、次のステップとして測量士の取得、あるいはICT施工全体をマネジメントするポジションへのキャリアアップが視野に入ってきます。僕が見てきた範囲では、現場の点群データ取得だけでなく、施工計画への提案までできる人材は、建設コンサルタントの中でも希少性が高く評価されやすい傾向にあります。ドローン測量は「入口の技術」であり、そこからどこまで職域を広げられるかが、5年後・10年後の年収を大きく左右します。

皆さんいかがでしたでしょうか。測量分野は、建設・土木の経験を活かしながら新しい専門性を積み上げられる、越境ルートとして現実的な選択肢です。資格・点群処理スキル・現場経験の3つをどう積み上げていくかが、この分野で長く活躍する鍵になります。まずは自分の現場での立ち位置を棚卸しすることから始めてみてください。次は農業ドローンの分野について、地方での働き方も含めて書いていきます。今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 測量士補とドローン操縦、どちらを先に取るべきですか?

目指す仕事によりますが、建設・土木業界にすでにいる方は測量士補を先に、未経験から測量分野を目指す方はドローン操縦の資格から始めるのが現実的です。最終的には両方の掛け算が評価されます。

Q. 測量士補は誰でも受験できますか?

測量士補試験は年齢・学歴を問わず誰でも受験できます。指定された大学等で測量に関する科目を修めた場合は試験免除のルートもありますが、社会人からの受験者の多くは国家試験ルートを利用しています。

Q. 点群処理ソフトは独学で習得できますか?

基本操作は独学でも習得可能ですが、実務レベルの精度を出すには現場での運用経験が重要です。未経験の場合は、測量会社や建設コンサルタントに入社してOJTで学ぶルートが一般的です。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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