警備・セキュリティ2026-08-18監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

警備業界で広がるドローン活用と警備ドローン人材のキャリア・年収

この記事の要点

「ドローンって、結局は“空飛ぶ監視カメラ”でしょう?」――去年の秋、都内で開かれた警備業界向けの展示会のブースで、大手警備会社の人事担当の方からそう聞かれたことがあります。

正直に言うと、僕の答えは半分は「はい」で、半分は「いいえ」でした。結論から言うと、警備業界におけるドローン活用は「警備員を無人化する」ための道具ではなく、「警備員の目が届かない場所に気配を足す」ための道具として広がっています。そしてこの動きに合わせて、警備会社の中に「ドローンオペレーター」という新しい職種の採用枠が少しずつできてきています。この記事では、警備×ドローンの現場で実際に何が起きているのか、どんな資格やスキルが必要で、待遇はどのくらいなのか、そしてよくある失敗まで、僕が現場で見聞きした話を交えてお伝えします。

0. 結論:警備ドローンは「無人化」ではなく「気配を増やす」仕事

まず結論からお伝えします。警備ドローンの仕事は、人を減らすための自動化ではなく、これまで巡回できていなかった広さ・高さ・時間帯をカバーするための増員に近い役割だと僕は捉えています。倉庫の敷地が広すぎて夜間巡回が一周40分かかっていたところを、ドローンなら数分で外周を映像化できる。工事現場の資材置き場を、警備員が徒歩で見回る代わりに上空から俯瞰する。こうした「補完」の使われ方が主流で、警備員がいなくなるわけではありません。むしろ、ドローンの映像を見て判断する警備員側の役割が増えているというのが、僕の体感値です。

1. なぜ今、警備業界でドローンが動き出しているのか

背景にあるのは、警備業界の人手不足です。警察庁が毎年公表している「警備業の概況」を見ると、警備業の許可業者数・警備員数はここ数年横ばいから微増で推移している一方、警備を依頼したい現場の数、大規模物流倉庫、再生可能エネルギー施設、屋外イベントの開催数などは増え続けています。厚生労働省の「一般職業紹介状況」の職業別有効求人倍率でも、警備員を含む「保安の職業」は他の職業に比べて高い水準で推移しており、時期によっては全職業平均の数倍近い数値になることも珍しくありません。つまり、需要に対して人が足りていない状態が慢性的に続いているということです。実際、大手警備会社各社がここ数年、ドローンを使った巡回警備の実証実験を発表するようになりました。この隙間を埋める手段として、警備会社が広範囲を一気に見渡せるドローンに目をつけたというのが実情に近いと僕は見ています。もう一つ付け加えるなら、警備員一人あたりがカバーできる面積は歩行速度に依存する物理的な限界があります。人を増やせないなら、一人がカバーできる範囲を機材で広げるしかない、という発想の転換が現場で起きているということです。ある地方の警備会社の役員の方は「若手の応募自体が減っている中で、既存の警備員に無理をさせず対応範囲を広げる手段としてドローンを検討し始めた」と話していました。人を採る競争ではなく、一人あたりの生産性を上げる競争にシフトしているという言い方もできると思います。

2. 警備ドローンが実際に使われている3つの現場

僕がこれまで話を聞いてきた範囲では、警備ドローンの導入現場は大きく3つのパターンに分かれます。

1つ目は、大規模施設・物流倉庫の夜間巡回です。敷地面積が数万平方メートルを超えるような物流センターでは、警備員が徒歩や巡回車で回るより、ドローンで外周と屋根上を定期的に飛ばすほうが効率的なケースがあります。異常があれば警備員が現地に急行する、という「一次確認をドローンが担う」役割です。ある倉庫の現場担当の方は、以前は2名体制で徒歩巡回を1時間おきに行っていたところ、ドローンによる外周確認を組み合わせることで巡回頻度を上げつつ、人員は同じ2名のまま体制を維持できたと話していました。

2つ目は、屋外イベントや工事現場の広域警備です。花火大会や音楽フェスのような一時的に人が密集するイベントでは、地上からでは見えない人流の偏りや混雑をドローンの映像で把握し、警備員の再配置に活かす使い方が増えています。大規模な土木・建設現場でも、資材置き場や重機置き場の遠隔監視にドローンを使う例が出てきています。

3つ目は、太陽光発電所や資材ヤードなどの遠隔監視です。常駐の警備員を置きにくい郊外の施設で、定期飛行や異常検知時の自動発報と組み合わせて使われるケースです。ここは点検分野と重なる部分もありますが、目的が「設備の異常」ではなく「不審者・盗難の抑止」である点が警備領域ならではの特徴です。実際、複数の資材ヤードを1人の遠隔オペレーターが日中と夜間に分けて巡回する体制を試験導入していた会社もあり、常駐警備員を1拠点あたり1名減らせたという話も耳にしました。ただしこれは特定の条件が揃った現場の話で、どの施設でも同じように削減できるわけではない点は付け加えておきます。

3. 求められる資格とスキルのリアル

警備ドローンオペレーターに必須の国家資格は、今のところありません。ただし採用の現場で重視されるのは、次の3つの掛け算だと僕は感じています。1つ目は、二等無人航空機操縦士のような操縦技能の証明。2つ目は、警備業法にもとづく警備員としての知識、新任教育・現任教育を受けていること。3つ目は、映像を見て「異常かどうか」を判断する監視オペレーションの経験です。実は3つ目が一番評価されやすく、実際に僕が話を聞いた警備会社の方は、機械警備の遠隔監視センターで5年ほど働いていた方にドローン資格を取ってもらい、施設警備部門のドローン運用担当に配置転換したと話していました。逆に、ドローン操縦だけできても警備の現場感覚がないと、いきなり配置されるのは難しいというのが実情に近いです。加えて、夜間飛行や目視外飛行を行う現場では、二等ではなく一等無人航空機操縦士の技能まで求められる求人も出始めています。ただし現時点ではまだ少数で、大半の求人は二等資格と実務経験の組み合わせで対応可能な範囲にとどまっている、というのが僕の肌感覚です。もう一点、意外と見落とされがちなのが機体トラブル対応です。夜間巡回中にバッテリー残量表示の誤差や突風による自動帰還のズレが起きることがあり、現場では「機体が戻ってこなかったらどう動くか」という緊急対応の訓練も並行して求められます。これは操縦技能そのものより、警備員としての冷静な初動対応力に近いスキルです。

4. 気になる年収・待遇を他の警備職と比べる

ここは表で比較したほうがイメージしやすいと思います。以下は、僕がこれまで求人票や現場の方から聞いた範囲での目安値であり、統一された公的統計があるわけではない点はご了承ください。

職種年収目安働き方の特徴
施設警備員(一般)300万円台前半常駐・シフト制、夜勤ありが多い
機械警備・遠隔監視オペレーター320〜380万円程度センターに常駐し複数現場を監視
警備ドローンオペレーター(中小規模導入企業)340〜400万円程度資格手当は少額、機体は1〜2台の兼務運用が中心
警備ドローンオペレーター(大手・複数拠点運用)380〜450万円程度資格手当・出張手当が上乗せ、専属配置の例あり

数字だけを見ると大きな差はないように見えますが、僕の体感値では、ドローン資格を持っていることで月1〜3万円程度の手当がつく求人が多く、また警備業界の中では珍しく「昼夜逆転の少ない働き方」を選びやすいという声を聞くことが多いです。夜間巡回そのものを機体に任せられる分、人の常駐時間を短縮できる現場があるためです。ただし表からも分かる通り、待遇差は会社の規模や導入段階によって差が出やすく、地方の中小警備会社ではまだドローン手当自体が存在しないケースも珍しくありません。転職や社内異動を検討する際は、求人票の年収レンジだけでなく、ドローン運用が試験導入なのか本格運用なのか、機体を専属で扱うのか兼務なのかを面接で確認しておくことをおすすめします。

5. 未経験から警備ドローン人材になるための準備手順とよくある失敗

ここからは、実際に目指す場合の順番の話です。僕がこれまでの相談で伝えている手順は次の3ステップです。

  1. まず警備員としての基礎を作る(目安半年〜1年)。新任教育・現任教育を受け、できれば施設警備または雑踏警備の実務を積む。
  2. そのうえで二等無人航空機操縦士の資格を取得する(目安1〜2ヶ月)。登録講習機関を使えば実地試験が免除される分、学科と実技講習に集中できます。
  3. 自社もしくは提携先でドローン監視業務のある警備会社に、社内異動または転職で入る。求人票では「ドローン」の文字がなくても、面接で「監視業務にドローンを導入予定」と話す企業が増えているので、面接時に直接聞いてみる価値があります。

ここでよく見かける失敗は3つあります。1つ目は、順番を逆にして「先にドローン資格だけ取る」パターンです。警備の現場感覚がないまま資格だけ持っていても、採用側からすると「監視業務の経験がない人」に見えてしまい、評価しづらいというのが正直なところです。実際、ある応募者の方は二等資格を取ってから警備業界の求人に応募したものの、書類選考の段階で「まず警備員として現場に入ってほしい」と言われ、結局は施設警備からのスタートになったと話していました。2つ目は、資格取得だけで満足してしまい、実際の運用ルールを学ばないまま現場に出てしまうパターンです。警備業務でのドローン運用は、施設の敷地境界、近隣住宅への配慮、飛行時間帯の制限など、航空法だけでは説明しきれない現場独自のルールが多くあります。資格取得後も、配属先の運用マニュアルを丁寧に読み込む姿勢が欠かせません。3つ目は、機体トラブル時の対応を軽視してしまうパターンです。前章で触れた通り、バッテリー異常や突風による自動帰還のズレは実際に起こり得ます。ある現場では、機体が想定と違う場所に着陸してしまい、担当者がマニュアル通りに動けず現場を離れてしまったことで、後日社内での信頼を落としてしまったという話も聞きました。操縦技術だけでなく、トラブル発生時に落ち着いて手順を踏めるかどうかも、採用後に評価される重要なポイントです。警備員としての土台を作ってから資格を足す、という順番のほうが遠回りに見えて実は近道だと僕は考えています。

(結論)

皆さんいかがでしたでしょうか。警備業界のドローン活用は、まだ大手を中心とした一部の現場での取り組みですが、人手不足という土台がある以上、今後も広がっていく分野だと僕は見ています。大事なのは、ドローンの操縦技術だけを磨くのではなく、警備員としての判断力・現場感覚、そしてトラブル時の初動対応力をセットで身につけることです。皆さまが今いる場所から一歩ずつ、資格と経験を積み重ねていけたらと思います。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 警備ドローンオペレーターになるのに必要な資格は何ですか?

必須の国家資格はありませんが、二等無人航空機操縦士の技能と、警備員としての新任・現任教育の修了、監視業務の経験が採用時に重視される傾向があります。特に映像から異常を判断する監視オペレーション経験は評価されやすく、機械警備の遠隔監視業務からの配置転換例もあります。

Q. 警備ドローンオペレーターの年収はどのくらいですか?

僕が求人票や現場の方から聞いた目安では350〜450万円程度で、施設警備員の300万円台前半より高めの水準です。資格手当が月1〜3万円程度上乗せされる求人も見られますが、統一された公的統計があるわけではないので体感値としてご理解ください。

Q. 未経験からでも警備ドローンの仕事に就けますか?

未経験からでも可能ですが、先にドローン資格だけを取るより、警備員として半年〜1年ほど施設警備などの実務を経験してから二等無人航空機操縦士を取得する順番のほうが、採用側から評価されやすいというのが現場の実情です。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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